2026 年 43 巻 2 号 p. 93-98
高い生物多様性を誇るサンゴ礁の形成に関わる「造礁サンゴ」は,光合成藻類である褐虫藻との共生を通じて光に強く依存した生活スタイルをとっている。しかしこれまで,サンゴが光をどのように感知し,行動や生理に結びつけているのかについては十分に解明されてこなかった。特に,浮遊生活を送る幼生が示す光応答行動は着底場所の選択や群集形成に直結する重要な要素でありながら,その実態や分子基盤は未解明の点が多い。本総説では,ミドリイシ属サンゴを例に生活史の中での光の機能を整理した上で,その中の一種ウスエダミドリイシの幼生期にみられるシンプルながら興味深い光応答行動について筆者らの研究を紹介する。また数理シミュレーションなどの結果を踏まえ,その生態的帰結や意義を考察する。最後に,サンゴがもつ多様なオプシン遺伝子とその光受容特性に関する研究を概観し,サンゴ幼生の光応答行動を支える分子機構の可能性について議論する。