弘前医学
Online ISSN : 2434-4656
Print ISSN : 0439-1721
原著
アデノシン誘発性冠抵抗血管の拡張は2型糖尿病ラットで障害されている: ATP感受性Kチャネルと一酸化窒素の役割
吉田 一弘石坂 浩長谷川 一志佐藤 清彦長内 智宏元村 成奥村 謙
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 61 巻 1 号 p. 8-18

詳細
抄録

 アデノシン誘発性冠抵抗血管の拡張は ATP感受性Kチャネルと一酸化窒素 (NO) を介することが報告されている.本研究ではアデノシン誘発性冠抵抗血管の拡張が ATP感受性Kチャネルの障害を介して2型糖尿病動物で抑制されているかどうかを検討した.8,32週齢の2型糖尿病ラット (OLETF) とコントロールラット (LETO) のランゲンドルフ心を用いてアデノシン,ピナシジル,ニトロプルシドによる冠灌流の変化をグリベンクラミドと NG-nitro-L-arginine methyl ester (L-NAME) 投与前後で測定した.32週齢では,アデノシン並びにピナシジル誘発性冠灌流の増加は OLETF が LETO に比して小であった.グリベンクラミドは LETO ではアデノシン誘発性冠灌流の増加を抑制したが,OLETF では抑制しなかった.一方,L-NAME は,OLETF ではアデノシン誘発性冠灌流の増加を抑制したが,LETO では抑制しなかった.ニトロプルシド誘発性冠灌流の増加は LETO と OLETF で差はなく,グリベンクラミドの影響を受けなかった. 8週齢の OLETF と LETO では,アデノシン,ピナシジル,ニトロプルシド誘発性冠灌流の増加に差は認められなかった.以上より, 2型糖尿病モデルでは,冠抵抗血管における ATP感受性Kチャネルは障害されている.また,アデノシン誘発性冠灌流の増加は主に NO の機序を介する.

著者関連情報
© 2010 弘前医学編集委員会
前の記事 次の記事
feedback
Top