2011 年 61 巻 2-4 号 p. 131-137
動脈硬化の危険因子の一つに肥満があげられるが,女性において動脈硬化の指標である上腕・足首脈波伝播速度 (baPWV) と各種の肥満指標を比較した報告は少ない.このため,本研究はこれらを年代毎に検討した.対象は平成18・19年度岩木健康増進プロジェクトに参加した女性655人であり,既往歴,喫煙・飲酒状況,運動習慣,腹囲,ウエストヒップ比 (WHR),BMI,体脂肪率,baPWV を調査とした.統計学的解析は,baPWV を従属変数,その他を独立変数として4つの肥満指標別に重回帰分析を行った.20-39歳では BMI,体脂肪率,腹囲,40-59歳では全部の肥満指標 (BMI,体脂肪率,腹囲,WHR) が baPWV と正の相関を示した.しかし,60歳以上では,WHR (腹囲ではなく) は PWV と正の相関を示したが,BMI が baPWV と負の相関を示し,他の2つの年代とは反対の傾向であった.これはこの群で生活習慣病や加齢によって体重が次第に減少した者の存在の影響と推測された.したがって,動脈硬化との関連においては全年代で腹部肥満が重要であることが確認されたが,BMI (全身肥満) の重要度は年代によって異なることが示唆された.また,腹囲と WHR の意義が異なることが示唆された.