弘前医学
Online ISSN : 2434-4656
Print ISSN : 0439-1721
症例研究
経皮的冠動脈形成術後に発症し非典型的臨床所見を呈した血栓性血小板減少性紫斑病の1例
斎藤 淳一 橋場 英二大川 浩文坪 敏仁石原 弘規廣田 和美
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 62 巻 2-4 号 p. 199-204

詳細
抄録

 急性心筋梗塞に対する経皮的冠動脈形成術後に急激な血小板の減少を来たし,血漿交換により救命した血小板減少性紫斑病 (thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP) の症例を経験したので報告する.
 症例は77歳女性.急性心筋梗塞の診断により経皮的冠動脈形成術を施行され ICU に入室した.ICU 入室直後より血小板減少 (13.3×10⁴/μl→1.9×10⁴/μl) を来たし,ヘパリン誘発性血小板減少症が疑われた.高度凝固線溶障害,肝・腎機能障害を認めた.明らかな溶血性貧血,精神症状は認めなかった.ヘパリン投与中止後も血小板の改善を認めず,第6,7病日に血漿交換を施行した.血漿交換施行当日より血小板の増加を認め,第9病日一般病棟へ帰室となった.血漿交換施行以前に採取した血液より ADAMTS13 活性の低下および ADAMTS13 inhibitor 活性の上昇が判明し,TTP と診断した.
 TTP は急激な血小板の減少を来たすが凝固能障害は軽度にとどまるとされ,本症例の検査結果と矛盾したため診断に難渋した.ADAMTS13 および ADAMTS13 inhibitor の測定が TTP と血小板減少をきたす疾患との鑑別に有用であっ た.

著者関連情報
© 2011 弘前医学編集委員会
前の記事
feedback
Top