2013 年 64 巻 1 号 p. 58-64
小児バンコマイシン (VCM) 投与設計支援時に散見される,血中濃度予測値と実測値のずれの原因を特定し,予測系の正確度精度向上を図った.VCM投与時に TDM が実施された16歳以下の患者のうち,クレアチニンクリアランス (CLcr) 値が推定可能であった25名を解析対象とした.初回VCM血中濃度ならびに VCMクリアランスを成人母集団パラメータ (A-PPK) および小児母集団パラメータ (P-PPK) を用いて予測し,実測値との差 (残差) を基に予測系の正確度精 度を評価した.また,初回VCM血中濃度について残差と患者背景因子との相関性を評価した.初回VCM血中濃度, VCMクリアランス共に A-PPK使用系の正確度精度が良好であった.A-PPK使用系の初回VCM血中濃度は年齢,体重, 体表面積と有意に相関しており,年齢に関するカットオフ値は6歳と推定された.小児において CLcr が推定できる場合 は, 6歳以上を目安に CLcr が組み込まれている A-PPK を用いることが推奨される.