弘前医学
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弘前医学会抄録
〈一般演題抄録〉鉄キレーターdesferrioxamineは培養アス トロサイト細胞株におけるCXCL8発現を誘導する
恩田 郁吉田 秀見松宮 朋穂早狩 亮今泉 忠淳
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2017 年 67 巻 2-4 号 p. 185-

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抄録

 アストロサイトは脳の恒常性の維持や種々の神経疾患の病態形成に重要な役割を果たしている。鉄はアル ツハイマー病をはじめとした様々な神経変性疾患の病態に関与していることが知られている。アルツハイマー病ではアミロイドβが神経細胞死に関与していると考えられているが、ケモカインのCXCL8 はアミロイドβによる傷害から神経細胞を保護する作用があると報告されている。本研究では、培養ヒトアストロサイト細胞株U373MGを用いて、鉄キレーターのdesferrioxamine がCXCL8 の発現に及ぼす影響を検討した。U373MG細胞をdesferrioxamineで処理すると、CXCL8の発現が誘導された。この反応は、細胞をFeSO₄で前処理しておくことにより抑制されたが、hypoxia-inducible factor (HIF)-1αのノックダウンには影響を受けなかった。このことから、desferrioxamine は鉄をキレートすることを介して、HIF-1α非依存的に、CXCL8 の発現を誘導すると考えられた。以上のことから、鉄のキレーションは、アルツハイマー病の治療戦略の一つとなる可能性が考えられた。

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© 2017 弘前医学編集委員会
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