弘前医学
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弘前医学会抄録
〈一般演題抄録〉脊髄アンジオテンシンII 系を介する糖尿病性神経障害性疼痛の発現機構
小潟 佳輝根本 亙中川西 修丹野 孝一只野 武村上 学
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2017 年 67 巻 2-4 号 p. 185-

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抄録

【目的】糖尿病性神経障害は1型糖尿病患者の約半数に認められる合併症で、その多くの場合、神経障害性疼痛を伴い、これが患者のQOL 低下を招く一因となっている。糖尿病のような高血糖状態では、レニン・アンジオテンシン (RA) 系が活性化しており、糖尿病性腎症や網膜症などの合併症の原因となっている。しかしながら、糖尿病性神経障害性疼痛におけるRA 系の関与については未だ検討が行われていない。一方、我々はこれまでにアンジオテンシンII (Ang II) が脊髄において痛みの伝達物質あるいは調節因子として機能している可能性を示唆している [Mol. Pain, 9:38 (2013)]。そこで、本研究では糖尿病性神経障害性疼痛における脊髄内Ang II 系の関与の可能性を明らかにするため、streptozotocin (STZ) 誘発性1 型糖尿病モデルマウスを用いて検討を行った。
【方法】実験には、ddY 系雄性マウスを用いた。1 型糖尿病モデルマウスは、STZ (200mg/kg) を尾静脈投与にて作製し、von Frey filament 法により疼痛閾値を測定した。脊髄内Ang II 系関連タンパク質の発現分布は、還流固定後マウスの脊髄標本を作製し、MapAnalyzer および共焦点顕微鏡を用いて解析した。
【結果・考察】STZ 誘発性糖尿病モデルマウスでは血糖値の上昇に平行して、対照群と比較して疼痛閾値の低下、すなわちアロディニアが認められた。十分な疼痛閾値の低下が認められたSTZ 投与後14 日目において、Ang II タイプ2 (AT₂) 受容体拮抗薬PD123319 は抗アロディニア作用を示さなかったものの、AT₁ 受容体拮抗薬losartan は対照群に影響を与えない用量で抗アロディニア作用を示した。次いで、糖尿病マウスの脊髄後角におけるAT₁ 受容体、Ang II およびアンジオテンシン変換酵素 (ACE) の発現分布を顕微測光法により解析したところ、AT₁ 受容体の発現量に変化は認められなかったが、Ang II およびACE に関しては対照群と比較してSTZ 群において有意な発現量の上昇が認められた。さらに、ACE の発現分布を共焦点顕微鏡により解析したところ、ACE はグリア細胞ではなく、神経細胞特異的に発現していることが確認された。以上の結果より、STZ 誘発性糖尿病マウスでは脊髄後角の神経細胞におけるACEの発現量増加に起因してAng II の生合成が促進され、Ang II はAT₂ 受容体ではなくAT₁受容体に作用することでアロディニアを引き起こしている可能性が示唆された。

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