弘前医学
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弘前医学会抄録
〈一般演題抄録〉うつ病モデルラットは内側前頭前野機能異常を起こす
二階堂 義和古川 智範下山 修司古賀 浩平上野 伸哉
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2017 年 67 巻 2-4 号 p. 185-

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抄録

[背景] うつ病患者は抑うつや社会的回避(ひきこもり)の他に、集中力の低下や意図した行動を正しく実行出来ないなどの症状を示す。これらは注意や行動抑制といった認知・実行機能を制御する前頭前野の機能的活動異常が関与すると考えられている。しかし、前頭前野機能的活動の基盤となる神経活動については分かっていない。
[目的] 本研究はうつ病モデルラットが認知・実行機能異常を示す時の内側前頭前野神経活動を解析し、うつ病による認知・実行機能異常の発症機序解明を目的とした。
[方法] 実験動物にラットを用い、慢性社会的敗北ストレス負荷によってラットをうつ病モデル化した。持続的な注意維持と行動制御が必要なオペラント課題(5-選択反応時間課題)遂行中のラット内側前頭前野神経細胞の活動を in vivo multi-unit recordings によって記録し、神経細胞群の行動依存的活動変化をうつ病モデル化前後で比較した。
[結果] うつ病モデル化は5-選択反応時間課題における正答反応試行低下と不正答試行増加、無反応試行増加を起こした。さらに、各応答試行時の内側前頭前野神経細胞群の活動を解析した結果、うつ病モデル化によって正答反応依存的な興奮性応答を示す神経細胞数の減少と興奮性応答の時間的応答パターンの減弱が生じた。
[考察] オペラント課題の行動応答の結果は、ラットをうつ病モデル化したことによって注意低下と行動抑制の増強が生じたことを示している。神経活動の解析結果は、うつ病モデル化によって注意維持から行動制御における内側前頭前野神経細胞群の協調的活動が傷害されたことを示している。以上から、内側前頭前野の機能的神経活動異常がうつ病における認知・実行機能異常の発症に関与していることが示唆された。

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