弘前医学
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弘前医学会抄録
〈一般演題抄録〉ジアゼパム長期投与マウス脳組織のトランスクリプトーム解析
古川 智範下山 修司二階堂 義和古賀 浩平中村 和彦上野 伸哉
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2017 年 67 巻 2-4 号 p. 186-

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抄録

【目的】ガンマアミノ酪酸(GABA)は中枢神経系において抑制性に作用する神経伝達物質であり、認知、学習、情動などの高次脳機能に大きく関与している。GABAによる抑制性情報伝達に障害が生じると、てんかん・不安症・うつ病・統合失調症・自閉症などの精神疾患が発症すると考えられている。これらの精神疾患治療薬として使用されるジアゼパ(DZP)は、GABA-A 受容体に結合してGABAの抑制性作用を亢進させ、鎮静、睡眠誘導、抗不安、抗痙攣などの効果を示す。近年、DZP長期投与により認知症発症リスクが増加するという臨床報告が急増しており、DZPの新たな弊害として注目されている。本研究では、DZP の長期投与により惹起される高次脳機能障害の分子的なメカニズムを解明するため、DZP を長期投与したモデル動物を作製してトランスクリプトーム解析をおこなった。
【結果】DZP (5mg/kg) を長期投与したマウス脳組織を用いて、認知機能に関わる大脳皮質、海馬、扁桃体の各領域を対象にランスクリプトーム解析を行った。その結果、DZP長期投与群マウスでは、リポカリン2 (Lcn2)遺伝子の発現に有意な増加が認められた。また、Lcn2 タンパクの発現量も有意に増加しており、DZPの長期投与は遺伝子レベルおよびタンパクレベルにおいてLcn2 の発現を亢進させることが明らかになった。さらに、DZP 長期投与によりLcn2 発現が亢進する細胞種を同定するため、DZP を添加した培地で培養した神経芽細胞、ミクログリア、アストロサイトを用いて、Lcn2 タンパク発現量を分析した。その結果、アストロサイトにおいてLcn2 タンパク発現量の有意な増加が認められた。
【考察】Lcn2 は分泌型糖タンパクで、炎症反応や鉄輸送に関わることが報告されている。しかし、DZP 長期投与マウスの遺伝子発現解析結果においては、炎症関連遺伝子の発現に変動は認められなかったことから、DZP 長期投与は鉄代謝経路に影響を及ぼす可能性が高いと考えられる。今後、DZP 長期投与により増加するLcn2 が神経回路機能に及ぼす影響とそのメカニズムを明らかにし、認知機能障害の治療法や予防法の開発に繋げていきたい。

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