弘前医学
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弘前医学会抄録
〈一般演題抄録〉ブドウ球菌エンテロトキシンA は杯細胞を介して小腸組織内に侵入する
廣瀬 昌平浅野 クリスナ中根 昭夫
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2017 年 67 巻 2-4 号 p. 186-

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抄録

【目的】ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)は嘔吐型食中毒を引き起こす。我々は嘔吐実験モデル動物スンクス (Suncus murinus) を用いた研究により、胃内投与した SEA が60分から90分で消化管の粘膜下組織肥満細胞に結合することを示した。しかし、SEA が消化管組織内に移行するメカニズムについては全く明らかになっていない。本研究では SEA の粘膜上皮バリア通過機構の解明を目的として、SEA の消化管内動態を解析した。
【方法】スンクスに SEA を胃内投与し、30分後に胃および腸管全域を摘出した。また、胃および腸管ループを作製して SEA を注入し、30分後に摘出した。各臓器は抗SEA抗体を用いた免疫染色、免疫電子顕微鏡解析および粘液親和 性レクチンを用いたレクチン染色に供した。また、粘液分泌を亢進するAllyl isothiocyanate (AITC) を SEA と共に添加した培地で回腸の器官培養を行いAB-PAS 染色、免疫染色およびレクチン染色に供した。
【結果ならびに考察】胃内投与後30 分において、SEA は空回腸の粘膜上皮杯細胞に局在していた。さらに、絨毛芯部の粘膜固有層に杯細胞の SEA陽性反応と連続した陽性像が認められ、SEA が杯細胞を介して粘膜上皮バリアを通過し粘膜固有層に到達していることが示唆された。また、胃および腸管ループでは、胃の粘膜に SEA陽性反応は観察されず、腸管全域の杯細胞に陽性反応が認められたことから、SEA は胃の粘膜には移行せず、腸管粘膜に移行することが示唆された。小腸粘膜上皮を免疫電子顕微鏡解析した結果、SEA は杯細胞の細胞質に局在し、上皮細胞間隙へは流出していなかった。さらに、吸収上皮細胞内に SEA陽性反応は認められなかった。以上より、SEA は杯細胞の細胞質内に取り込まれることが示唆された。また、粘液を放出した SEA陽性杯細胞は粘液を貯留した SEA陽性杯細胞と比較して有意に多かった。さらに、回腸をAITC で刺激すると SEA陽性杯細胞数が増加した。以上の結果から、経口摂取された SEA は粘液を分泌した杯細胞を介して小腸組織内に移行すると考えられる。

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