弘前医学
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弘前医学会抄録
〈一般演題抄録〉マウス同種異系臍帯血移植による機能的免疫細胞再構築に関する検証
照井 健一郎前田 浩志佐藤 英明伊東 京子中野 学伊藤 巧一
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2017 年 67 巻 2-4 号 p. 186-

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抄録

【目的】造血幹細胞 (HSC) 移植は白血病や再生不良性貧血に対する有効な治療法である。主な移植ソースとして骨髄細胞 (BMC) と臍帯血 (UCBC) が用いられているが、特に臍帯血移植では組織適合性抗原 (MHC) 不適合下での移植 の実用化が求められている。そこで本研究では MHC不適合UCBC移植マウスモデルを用い、移植HSC に由来する免疫細胞再構築を経時的に解析すると共に、その機能性について検証した。
【方法】UCBC は GFPトランスジェニックB6♂と野生型B6♀を交配した F1胎児(H-2b) から、BMC は同 F1成熟マウスの大腿骨及び骨盤から採取した。これら GFP⁺ UCBC (1.0×10⁶個 および 2.5×10⁶個) または GFP⁺ BMC (1.0×10⁶個) を致死量X線照射した野生型BALB/c (H-2d)(異系移植) および野生型B6(H-2b)(同系移植) レシピエントマウスに移植した。移植後 4週毎に 16週まで末梢血中に再構築された GFP⁺免疫細胞をフローサイトメトリーで検出した。また、T細胞ならびにB細胞欠損Rag2-/-BALB/c レシピエントマウスに異系UCBCおよびBMC 移植を行い、構築された GFP⁺T細胞機能を皮膚片拒絶反応で、GFP⁺B細胞機能を T細胞依存性抗原TNP-KLH接種に対する TNP特異的抗体産生で評価した。
【結果と考察】移植16週後の生存率は、同系移植群 (1.0×10⁶個) で UCBC は 80.0%、BMC は100%であった。一方、異系移植群 (1.0×10⁶個) では UCBC は 13.3%、BMC は 86.7%と UCBC での生存率の低下が見られたが、2.5倍量UCBC (2.5×10⁶個) 投与で生存率は 77.8%まで回復した。また移植16週後の末梢血GFP⁺細胞率は同系ならびに異系BMC移植群でそれぞれ 91.8%と 87.8%であった。これに対し同系ならびに異系UCBC移植群 (1.0×10⁶個) ではそれぞれ 79.3%と 0%であったが、異系UCBC移植群 (2.5×10⁶個) で末梢血GFP⁺細胞率は 44.5%まで上昇した。またこれら再構築されたすべてのGFP⁺細胞は主要免疫細胞4分画を含んでいた。さらに、異系UCBC および BMC移植によりRag2-/-BALB/c マウスで構築した T細胞と B細胞には充分な免疫学的機能性が備わっていることが証明された。以上の結果から、異系臍帯血移植でも充分な機能性を有した免疫系再構築が可能であることが証明されたが、臍帯血移植の低生着性を克服することが今後の重要な課題として残った。

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