弘前医学
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弘前医学会抄録
〈一般演題抄録〉悪性腫瘍後の二次性造血器悪性腫瘍と、造血器悪性腫瘍後の二次性固形がん発症例の検討
間山 恒山形 和史高畑 武功鎌田 耕輔陳 豫斎藤 絢介玉井 佳子佐藤 温福田 眞作髙見 秀樹
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2018 年 68 巻 2-4 号 p. 190-

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抄録

【はじめに】悪性腫瘍に対する抗がん治療の進歩に伴い、長期生存例が増加した現在、二次がんの発生に十分な注意が必要である。小児悪性腫瘍治療後の長期経過観察報告は多いものの、日本人における成人の長期経過観察報告は少なく、不明な点が多い。
 【対象と方法】当院血液内科・腫瘍内科で2007年~2016年の10 年間に経験した悪性腫瘍後の二次性造血器悪性腫瘍合併症例と造血器悪性腫瘍後の二次性固形がん合併症例について、原疾患とその治療内容、二次性悪性腫瘍発症時の年齢、原疾患治療開始から発症までの期間、治療内容、予後、発見経緯について検討した。
 【結果】 1. 悪性腫瘍後の二次性造血器悪性腫瘍合併症例: 10年間に12例 (乳がん7例、非ホジキンリンパ腫(NHL)2例、肺がん、子宮体がん、卵巣がん+子宮体がんが1例ずつ) が二次性造血器悪性腫瘍を発症した。内訳は急性骨髄性白血病(AML) 7例、急性リンパ性白血病3 例、多発性骨髄腫(MM) 2例であった。二次性造血器悪性腫瘍発症時の年齢中央値は55.5歳で、発症までの平均は80.3ヶ月、中央値は67ヶ月であった。発見の経緯は12例中8例が原疾患の経過観察中の採血異常であった。9 例に化学療法が行われ、4例が生存している。 2. 造血器悪性腫瘍後の二次性固形がん合併症例: 10年間に5例 (AML 2例、NHL 1例、原発性マクログロブリン血症 1例、MM 1例) が二次性固形がんを発症した。内訳は大腸がん 3例、肺がん 1例、肺がん+食道がんが1例であった。固形がん発症時の年齢中央値は71歳で、発症までの平均は33ヶ月、中央値は26 ヶ月であった。発見時に進行症例が多く、手術的治療が可能であった2例のみ生存している。発見の経緯は、がん検診や自覚症状の出現であり、通常の原疾患再発監視のスクリーニング採血では異常を指摘できなかった。
 【まとめ】原発性乳がん症例の抗がん剤治療・放射線療法後には、二次性造血器悪性腫瘍合併の可能性について十分なインフォームドコンセントを行い、長期間にわたる定期的な末梢血検査が必要と考えられた。二次性固形がんは通 常の採血検査では発見できず、一般検診の積極的な受診を勧奨して早期発見に努めることの重要性が示唆された。

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