弘前医学
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弘前医学会抄録
〈一般演題抄録〉脊髄損傷モデルマウスにおける性差による損傷後不安障害および脊髄機能障害発現の違い
福徳 達宏熊谷 玄太郎藤田 拓佐々木 綾子和田 簡一郎工藤 整浅利 亨二階堂 義和上野 伸哉石橋 恭之
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2019 年 69 巻 1-4 号 p. 201-

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抄録

【目的】脊髄損傷後には不安障害の合併症が生じると報告されているが、不安障害と神経機能障害との関連は不明な点が多い。本研究の目的は、脊髄損傷モデルマウスにおける不安障害と運動あるいは感覚機能障害との関連について検討することである。 【対象と方法】対象は C57BL/6J マウス(8 週齢)の 21 匹(雌 10 匹, 雄 11 匹)である。第 10 胸椎レベルの脊髄に 60kdyn(中等度損傷)の圧挫 損傷を加えた脊髄損傷(SCI)モデルを作成し、術後 6 週間不安行動・運動/感覚機能を評価した。不安評価は Open field test (OFT)におけるfield 内中心 25%領域の移動距離の割合(In center 25%)、Elevated plus-maze における移動距離の割合(EPM%)、Light/Dark test におけるLight room の滞在時間の割合(L/D%)で評価した。運動機能評価は、後肢運動機能を BMS scale、協調運動を Rota-rod test、活動性を OFT における総移動距離で評価した。感覚機能評価は、Mechanical test, Heat test で評価した。検討項目は 1)損傷前後における各評価項目の 2 群間の比較、2)SCI 群における不安評価項目と運動あるいは感覚機能評価項目との相関関係である。 【結果】1)不安評価は、雌が雄と比較して SCI 後 2,4 週で有意に不安様行動を示した。運動機能は、2 群間に有意な差は認めなかった。感覚機能は、雄が雌と比較して SCI 後で有意に感覚過敏を示した。 2) 雌では 2 週で不安様行動と感覚機能障害が正の相関を示し、雄では 2,4,6 週で不安様行動と運動機能障害が正の相関を示した。 【考察および結語】過去の報告では SCI 後の雌ラットが雄と比較して有意に運動機能回復を示しているが、本研究においては運動機能においては性差を認めなかった。一方で、損傷後の不安障害は運動・感覚機能障害と関連を認め、不安障害に対する治療介入が脊髄機能を改筈させる可能性があると考えられた。

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