弘前医学
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〈一般演題抄録〉神経筋疾患患者に対するロボットスーツ HAL® ( Hybrid Assistive Limb®)を用いた歩行運動処阻の治療効果
古川 正和三浦 和知津田 英一石橋 恭之
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2019 年 69 巻 1-4 号 p. 209-

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抄録

【背景】HAL®医療用下肢タイプを用いた歩行運動処阻(以下 HAL®治療)は、歩行能力の改善に有用であることが報告されているが、その機序については不明な点も多い。本研究のH的は、神経筋疾患患者を対象として、HAL 治療が歩行時の下肢筋活動•関節キネマティクスに及ぼす影響について明らかにすることである。
【対象と方法】神経筋疾患患者の男性 7 名(平均年齢 67.4 歳:56-72 歳)を対象とし、計 9 回のHAL®治療を行った。治療前後の評価として、(1)10m 歩行テスト: 歩行速度、歩幅、歩行率、両下肢筋活動(中殿筋、外側広筋、大腿二頭筋、前腔骨筋)、股関節と膝関節の伸展•屈曲角度、および(2)2分間歩行テスト:歩行距離と 2 分間歩行前後の修正 Borg scale を測定した。下肢筋活動は表面筋電計(Multi-channel telemetering system WEB-7000:日本光電)にて記録し、波形解析と動作解析には KineAnalyzer(KISSEI COMTEC)を用いた。各測定項HをWilcoxon signed rank test を用いて HAL®治療前後で比較した。
【結果】(1)10m 歩行テスト:歩幅(治療前 0.39土0.15 m/step、治療後 0.47土 0.10m/step:p=0.048)が有意に増加したが、歩行速度(0.73土0.27 m/s、0.91土 0.17m/s:p=0.117)と歩行率(1.83土0.30 step/s、1.96土0.40step/s:P=0.248) では有意な変化を認めなかった。歩行時の下肢関節角度では踵接地期における股関節屈曲角度(24.8土9.5°、21.4土11.1°:p=0.018)が有意に減少した。歩行時の 下肢筋活動には各筋で有意な変化を認めなかったが、立脚期における両下肢の外側 広筋の活動が低下する傾向を認めた。(2)2 分間歩行テスト:歩行距離(60.7土24.0m、 78.2土16.8m:p=0.023)は有意に増加したが、歩行後の修正 Borg scale(4.5土3.1、 3.0土2.2:p=0.129)は有意な変化を認めなかった。
【考察】治験結果と同様に HAL 治療により神経筋疾患において 2 分間歩行距離が有意に改善した。立脚期における股関節屈曲角度の減少は、体幹前傾の改善を示唆し、歩幅の増加を促した可能性が考えられた。また歩行距離が延長したにも関わらず、立脚期における外側広筋の筋活動が減少したことから、歩容の改善に伴い歩行効率の改善が得られた可能性が示唆された。

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