弘前医学
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弘前医学会抄録
〈一般演題抄録〉死後房水糖値の測定意義(第2報:房水中Cペプチドとインスリン濃度について)
町田 光司町田 祐子長谷川 範幸中村 光男高橋 識志
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2020 年 70 巻 2-4 号 p. 180

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抄録

 死後経過に伴って赤血球の解糖系により血糖値は下がり続けるが、血球の無 い房水の糖濃度は比較的緩徐に低下し、比較的安定である。
  死後房水糖値(PMAG:Post Mortem Aqueous humor Glucose)を検討する事により、死亡前の血糖値の推定が可能である事を昨年の本学会で発表した。
  PMAGが死後1〜2日の短期間で20mg/dl 未満の低値の場合には低栄養や低血糖が疑われるが、今回は特に低血糖の診断について房水中のインスリン(IRI)やCペプチド(CPR)を測定して比較検討した。
  低血糖を疑われた検死5例について死後房水中のインスリン(IRI)を検 討したところ、インスリン治療中の3例にIRIが認められ、房水内に外因性 インスリンが移行したものと考えられ、更にPMAGの低い2例では低血糖と 考えられた。
  次にインスリンについて検死7例の房水中のCペプチド(CPR)を検討し たところ、CPRは全例に認められたため、内因性のインスリンも房水に移行 しているものと考えられた。
  更に、低血糖3例の臨床例と、房水中IRIとCPRを測定し得た検死9例 においてIRI/CPRを検討したところ、外因性インスリンによる低血糖疑いの検死例ではCPRが測定感度以下に抑制され、この比が少なくとも10以上 と高値であり、低血糖の鑑別診断に有用と考えられた。

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