フロリジンはりんごの果皮に高濃度に含まれるポリフェノールで,抗癌作用や血糖低下作用を示す.実際,最新 の高血糖治療薬として臨床で用いられている薬剤は,フロリジンの腎特異性を高めた誘導体である.しかし,りんごを 果皮ごと食用とする場合,農薬が懸念される.確かにりんご栽培には農薬の使用が不可避とされているが,青森県津軽 地方には,無肥料・無農薬によるりんごの自然栽培に成功した圃場がある.そこで今回,この圃場の「ふじ」を5 ヶ月 間採取し,果皮のフロリジン含量を質量分析により解析した.対照には化学肥料不使用・減農薬栽培の「ふじ」を用いた. その結果,前者のフロリジン含量は後者に比べ,採取時期を問わず有意に大きいことが判明した.自然栽培されたりん ごは,果実のみならず果皮のポリフェノールも安心して摂取できることから,今後の発展が期待される.