2018 年 29 巻 p. 11-34
オオタチヤナギ Salix pierotii Miq. とジャヤナギ S. eriocarpa Franch. et Savat. の雌性個体の識別は難 しく,雌花の腺体数の違いが第一にあげられ(木村, 1989),若葉の毛,成葉の形態,柱頭の形態などが識 別形質とされてきた.関東と近畿に生育するオオタチヤナギ群とジャヤナギ群について,既往研究で提示さ れた識別点を調査検討したところ,これまで最も重要視されてきた腺体数の違いは安定的なものではなく, 既往文献で用いられてきた他の識別形質についても,両種群を明確に識別できるものは見いだせなかった. しかしながら,冬芽のサイズ比,冬芽の芽鱗背面におけるヒビ筋の有無,苞内面の毛の状態,雌花の腺体数 については両種群を識別するうえで有用であることがわかった.両種群の日本での取り扱いは,木村(1989) が両種を併記して議論するまで長期間,学名と和名の取り扱いが混乱してきたが,その間の経過や概要につ いても議論した.