抄録
筆者は2009 年5 月23 日,京都府の巨椋池干拓地の圃場整備済みの水田で鳥類標識調査を実施した際,
農業用水路に落下したケリのヒナ1 羽を発見した.28 日齢と推定されたこのヒナは,水路の底に留まり脱
出できずにいた.水路はコンクリート製のU 字溝であり,幅50 cm,高さ50 cm で両側壁が床面に対し
て垂直な形状であった.この観察記録は,農地改変がケリの繁殖活動に影響を及ぼすことを示唆している.
また,本論文は農業用水路に落下したケリのヒナに関する初めての観察報告である.ケリの保全に資するた
めに,今後は,ヒナの落下事例に関する情報を収集・蓄積すると共に,落下事故の発生する水路の物理的特
徴や,落下要因を詳細に解明する必要がある.