2020 Volume 4 Issue 1 Pages 60-61
全国保健師教育機関協議会の平成29年度ブロック再編成により,「東海,北陸,近畿ブロック」が「東海,近畿北ブロック」と「北陸,近畿南ブロック」に分かれて3年が経過した.この間,両ブロックの地域には保健師養成を行う大学が増え,2019年12月現在の会員校数はいずれも37校である.今年度就任したブロック理事各1名とブロック委員各2名(計6名)は合同ブロック委員会を組織,前任理事2名のサポートを得ながら定例会議とブロック研修会の企画運営を行った.本稿では,ブロック研修会活動について報告を行う.
第1回については活動計画通り,「公衆衛生看護学教員のキャリアラダー研修(レベル1)と現任教育」をテーマに10月13日(日),新大阪丸ビル別館において開催した.研修委員会山口忍委員長(茨城県立医療大学)を講師に迎え,41名が参加したが,台風19号の日本列島接近に伴い,当日まで開催が危ぶまれる状況にあった.事前打ち合わせにより,講師から会場到着が不可能な場合に研修委員を講師代理とする案が出され,また会場アクセスを考えて参加予定者には「当日10時のJR運休状況をもとに中止の判断をする」旨のメール連絡を入れて備えた.被害への対応からか数名の欠席があったものの,予定通り開催することができた.運営側には不測の事態に迅速に対応する心構えと意見を交わす関係性が重要であると学んだ事態であった.
当日の参加者は,講師から協議会の教員研修について詳しい説明を受け,さらに教育に対する講師の篤い思い(「学生の成長を喜ぶ教員になろう」,「保健師としてのアイデンティティをもとう」など)に聞き入った.その後,レベル1研修(現「ラダーI研修」)受講者の若杉早苗氏(聖隷クリストファー大学)と西田大介氏(梅花女子大学)の報告が続き,グループ別に各校の現任教育の現状や課題について話し合った.活発な情報交換と発表が行われ,最後に講師から「教員は先輩保健師としてのあるべき姿を見せる」,「主観と客観の情報を区別した実習記録の記述指導をする」など,グループの発表内容に合わせた助言を得た.
グループ発表と参加者の感想からは,教員研修の意義と課題(日程が参加しにくいなど),新任期教員が同じ立場の者と話す機会の重要性と疑問や思いを語る場の必要性が読み取れた.「ぜひ参加したい」という新任期教員の言葉や,「助教を参加させたい」との教授の声が聴かれ,講師や受講体験者に相談する姿も見られた.これらから,教員が参加を希望し,かつ参加を可能とする研修システムの検討と養成校の現任教育体制の整備が必要であると考えた.
2. 第2回合同ブロック研修会第3回理事会において「保健師教育課程の質を保証する評価基準」の再検討の必要性が話し合われた.ブロックにおいて検証する意見も出されたことを受け,理事2名が合同ブロック委員会(8月28日緊急メール会議)に活動計画の変更を提案し,全員の承認を得て三役に報告した.これより,「保健師教育の質を保証する評価基準」を作成した教育体制委員会と協働して準備を進め,第2回は「保健師教育をよりよくするための評価基準について考える」をテーマに12月21日(土),名古屋ウィンクあいちにおいて開催した.研修会の開放を考え,広報・国際委員会の吾郷委員長に相談したところ,迅速な対応をしていただき,全国会員校への一斉メールによる周知となった.その結果,他ブロックの2名を含む計34校48名の参加があった.
当日の話題提供を教育体制委員会が担い,委員の西出(三重大学)が「教育機関における評価」,和泉京子委員長(武庫川女子大学大学院)が「保健師教育課程の質を保証する評価基準」について説明,続いて職位別にグループワークを行った.「看護師学士課程評価表(看護師)」と「学士課程における助産師教育課程自己評価の各評価基準(助産師)」を資料に,教授グループが基準1「教育目的・課程の編成」と基準2「教育研究組織と財政基盤」,准教授グループが基準5「教育内容及び方法」,助教グループが基準8「実習施設」を担当した.
グループ別の活発な意見交換後の発表において,基準の内容や表現への疑問とその改善案が示され,それらに賛同する反応が多かった.その後,委員長からは,現行基準の改善点などの意見(表現の曖昧さ,解釈指針の検討の必要性など)と代替案提示への感謝の意が述べられた.さらに,保健師教育の評価基準に沿って各教育機関が自校を評価する意義,基準が適正かつ評価しやすいものになっていく必要性が語られた.ブロック活動計画を変更して実施した研修であったが,会場全体が話題提供から一貫して熱気に包まれ,笑い声のあふれる場面も多かった.職位別にひとつの評価基準を深く検討する形式が,今後の検討プロセスに活用可能との手応えを得た.教育評価を考えることは,あるべき教育を考えることでもある.指定規則改正時期に保健師教育を担う教員が参集し,必要性と実現可能性を意識しつつ評価基準を具体的に考えることは,教員自身の振り返りと各養成校の改善策の検討にもつながるものであると考える.
来年度は,各校が新カリキュラムへの移行に向けた準備を行う時期にあたる.奇しくも,今年度理事会において,研修委員会企画の今後の夏季教員研修を各ブロックが持ち回りにより運営することが決定され,令和2年度には北陸・近畿南ブロックが担当する.また,秋季教員研修の開催地が京都であるため東海・近畿北ブロックが運営協力することになり,来年度は2つの全国研修会の運営を両ブロックが担っていく.これを強みととらえ,本ブロックにとって,また各会員校にとって有益となるよう,全国研修会(テーマ「公衆衛生看護学のコアの継承と発展―指定規則改編によるカリキュラムを考える」)の積極的活用を推奨する.
担当:西出りつ子(三重大学)
大塚敏子(椙山女学園大学)
安孫子尚子(聖泉大学)
魚崎須美(神戸常盤大学)
原田小夜(梅花女子大学)
西井崇之(関西医療大学)