2022 年 6 巻 1 号 p. 55-56
本委員会は今年度4つの調査に取り組んだ.2つは活動計画に挙げていた第108回保健師国家試験の内容調査と環境調査である.加えて7月には厚労省から全保教に依頼された令和3年国家試験出題基準改定部会への意見シートの取りまとめと,2月に急遽実施したコロナ欠席調査である.今年度委員会はメールとオンライン会議で行った.
会員校229校から111件の回答があった.2校合同チームの回答が3件あり,114校の会員校から302件の意見が集まった.検討の結果,不適切問題9問,改善を求める問題17問であった.第103回から第108回までのタキソノミー分布の推移を見ると明らかにタキソノミーが低くなっていた(図1).これらの意見は厚生労働省医政局看護課に書面を提出した(書面はホームページに掲載).
第103回~第108回タキソノミー分布の推移(全体)
厚生労働省は,すべての国家試験において追試を行わず,新型コロナウイルス感染症の関係で欠席した場合は受験料を返還するとしている.感染症対策下で人材の確保が急務とされる保健師の実働数への影響を念頭に急遽調査を行った.結果,134校から保健師国家試験受験票交付者2,870名についての回答が寄せられた.保健師国家試験コロナ欠席者は3名,そのうち看護師国家試験欠席者はなく,保健師就職予定者はいなかった.コロナ欠席者がいた場合に追試が必要かという問に対して追試が必要と回答した者は124名(92.5%)であった.自由記載のあった45件(36.3%)のほとんどが,追試の必要性について述べ,1件は過去のように年2回の国家試験を検討して欲しいと述べていた.
全保教では国家試験の質向上を目指し,出題内容調査,国家試験作問に関する研修会,国家試験作問ガイド作成等の取り組みを実施してきた.多くの教員が国家試験の作問に取り組み,厚生労働省に登録することにより質の高い問題が増加すると考える.保健師国家試験の改善に向けて,良質の問題や出題に用いる事例を投稿することが全保教の使命であると考える.
2. 保健師国家試験に関する課題について国家試験委員会では今年度の4つの調査を経て,3点の課題を挙げる.1点目は前述の国家試験作問スキル向上の取り組みである.2点目は国家試験会場に関する課題である.同じ年度に保健師と看護師の国家試験を受験する場合に同じ都市で受験できるよう要望することを検討したい.3点目は追試についてである.看護師国家試験では過去に悪天候により追試が行われた.災害時には追試が実施されるよう文部科学省の大学入試共通テストと同様の対応が必要であると考える.
国家試験委員会の活動は会員校の皆様の意見が原資である.今年度の4つの調査に多くの回答を寄せていただき心より感謝申し上げる.今後も国家試験委員会として情報の分析と発信に取り組みたい.オンライン研修は随時実施するため声を掛けて欲しい.今後も会員校と共に歩む委員会として活動していきたい.
担当:播本雅津子(名寄市立大学保健福祉学部看護学科)
大西眞由美(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
宇田優子(新潟医療福祉大学看護学部看護学科)
大谷喜美江(四日市看護医療大学看護医療学部看護学科)
齋藤公彦(福山平成大学看護学部看護学科)
関 美雪(埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科)