北海道民族学
Online ISSN : 2759-9272
Print ISSN : 1881-0047
南東アラスカ先住民における生業ニシン卵収穫
―沿岸水産資源のCo-Stewardshipへの課題―
濵田 信吾
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2024 年 20 巻 p. 2-16

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抄録
本論の目的は、米国アラスカ州南東部における先住民トリンギットとハイダによる伝統的な生業ニシン卵収穫の民族誌的記録と、脱植民地化に向けたニシン資源の協働管理責務システムの構築の必要性を主張することである。南東アラスカにおけるニシン卵の収穫は、抱卵ニシンを産卵前に漁獲する商用巻き網漁業と、産卵後のニシン卵を収穫する生業漁撈に大別される。ニシン卵は、北アメリカ北西部先住民社会において歴史的に貴重な交易品であり、現在も産卵床を人工的に増設する伝統的な方法で生業収穫されるニシン卵の多くが先住民社会ネットワークを通じて分配されている。しかしながら、1980 年に制定したアラスカ国家利益土地保全法で明記された、野生資源の利用における先住民の生業活動の優先的利用は水産資源管理において実現されていない。本論は、ニシン産卵域が歴史的な記録に比べると大きく減少し、生活様式の変化とともに生業収穫者数が減少する中で、ニシン資源をアラスカ州と先住民族が公正な立場で協働する資源管理責務(co-stewardship)の実現は、南東アラスカ先住民社会と生活の脱植民地化へとつながると論じる。 キーワード:南東アラスカ、ニシン、生業、ガバナンス、海洋政策
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