現代社会学研究
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尊厳死の支援体制に関する比較研究
米国のオレゴン州,ワシントン州,バーモント州の事例分析
片桐 資津子
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2018 年 31 巻 p. 19-35

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抄録

米国の尊厳死とは,法令順守のもとで医師により処方された致死薬の服用による死である。処方された致死薬をいつ服用するかは,患者が決断する。その際,患者への支援が重要となってくる。尊厳死法は一部の州で施行されている ため,支援体制も州ごとに確立されている。本稿では,尊厳死法が最も早い段階で制定されたオレゴン州のローカル支援組織を中心に,ワシントン州,バーモント州のそれらと比較することにより,支援体制のあり方を探索した。 まず,3州の共通点は,全国支援組織の「縮小化」が,ローカル支援組織の支援体制の困難となることであった。これにより,オレゴン州では全国支援組織から資金面での独立が余儀なくされた。ワシントン州もバーモント州もオレゴン州の経験に学び,ローカル支援組織が,尊厳死の考え方/価値観を州民に伝え,賛同者を増やしていけば,実際のところ寄付を増やすことにつながり,そして寄付が増えれば,ローカル支援組織の運営がより安定していくという“正のサイクル” を認識していた。つぎに3州の相違点は,オレゴン州では4ブロック制で分散型ネットワーク,ワシントン州ではブロック制なしで集約型組織,バーモント州ではブロック制なしで集約型ネットワークというのが組織のタイプとなっていた。この違いは,ローカル支援組織が全国支援組織の縮小化をどのように受け止め,どのように対処したかという結果として表出したものと考えられる。

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© 2018 北海道社会学会
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