現代社会学研究
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宗教団体への所属が幸福感に及ぼす影響
「宗教と主観的ウェルビーイング」に関する調査のデータ分析から
清水 香基
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 33 巻 p. 1-21

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抄録

欧米のキリスト教を中心とした宗教社会学研究において,宗教団体への所属が幸福感にとって望ましいものであることは,すでにある程度確立された知識とされている。しかし,日本ではその宗教文化的状況の特殊性から,一言に宗 教団体への所属といっても,その意味するところは研究者にとっても調査対象者にとっても曖昧なものとなってしまうという問題がある。そのため,欧米で開発された理論を日本にあてはめて検討していくにあたって,欧米と同一の質 問項目を用いて分析を行うことは適切でない。したがって,本稿ではまず,氏子・檀家といった特殊日本的な宗教団体所属のあり方を射程に含めた上で,調査主体側の「所属」の定義と調査対象者側とのそれを,できる限り擦り合わせ ていくような新しい質問項目を考案し,その有効性を検討する。その上で,日本における宗教団体所属と幸福感の関係について検討を行った。所属が幸福感に影響する仕組みとしては,次のような2つを想定した。(1)所属すること で宗教心が育まれるか,あるいは(2)所属によって地域共同体における人間関係が取りもたれることで,結果として幸福感に寄与するというものである。分析の結果,前者については部分的に支持されるものの,宗教心を伴わない所 属はかえって幸福感を低下させる可能性があることが示唆された。後者については,それを支持する有意な結果は認められなかった。

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