現代社会学研究
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寄稿論文 北海道における外国労働者への依存深化と地域社会の課題 -農業分野を中心に-
宮入 隆
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 35 巻 p. 21-38

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抄録

本稿では,コロナ禍で加速する在留資格の複線化を伴った外国人材の受入拡大傾向を捉え,統計資料の分析から道内における外国人材雇用の特徴を整理するとともに,農業分野もしくは農村での実態分析を踏まえて,地域的な受入体制の整備課題を検討した。北海道農業は市場環境の変化のなかで,家族労働力でまかなえる範疇を超えた規模拡大を成し遂げ,とくに,酪農畜産や施設園芸など労働集約的経営において外国人労働者が多く雇用されてきた。近年では,大規模酪農経営で顕著なように,技能実習生だけではなく,専門的な人材確保へと進展を見せている。日本人が雇用できなければ,さらに複数の在留資格を活用しながら,多様な場面で外国人労働者への依存が高まる可能性が高い。特定技能が新設され,外国人技能実習制度からの移行が進んだとしても,非熟練労働者として働く外国人の割合が高い北海道では,今後も10 年以内の一時的な移住というかたちでの受け入れが主流となっていくと考えられる。また,コロナ禍でも継続した外国人労働者への依存の高まりは,アフター・コロナの人材獲得競争の激化も示唆している。生活インフラの脆弱化している農村地域では,雇用条件や労働環境だけではなく,安心して働ける条件整備のために自治体を中心とする地域的な生活面での支援とともに,働く外国人を地域でともに暮らす生活者として受け入れていく地域住民の意識の醸成も欠かせない。

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© 2022 北海道社会学会
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