現代社会学研究
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日本社会の発展と再生産様式の変容
小内 透
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2001 年 14 巻 p. 115-134

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抄録

わが国の階級・階層構造の再生産のあり方は,二元的再生産様式,一元的再生産様式,多元的再生産様式という形で段階的に変化してきた。
第二次大戦前には,二元的な再生産様式のもとで労働者・農民と資本家・地主という身分的な性格をともなう階級・階層構造が複線型の教育体系を通して再生産されていた。
戦後,教育体系が単線化されることにより,ヒエラルヒー的な一元的再生産様式の基礎が作られた。しかし,一元的な機構的システムが完成するのは,六大企業集団を中心とする一元的機構的システムが構築され,生活水準が向上した高度経済成長期に入ってからであった。その後,オイルショックを契機に低成長期へ移行したが,一元的再生産様式は解体されず,むしろ成熟した形をとり,階級・階層の世代的再生産の傾向が強まった。
しかし,バブル経済とソ連型社会主義の崩壊を契機に,一元的でヒエラルヒー的な経済機構が解体傾向を見せ,高校・高等教育機関や大学入試の多様化によって,再生産機構としての教育機構も多様化し,多元的再生産様式が新たに構築され始めた。
ただし,今のところ,諸個人の労働―生活世界は新たな変化に対応したものになっていない。そのため,今後,機構的システムと労働―生活世界のいずれに合わせた形で両者が対応したものになるのかが,当面の焦点になっている。

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