現代社会学研究
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場所請負制と遊女の誕生
大嶋 謙一
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キーワード: 場所請負制, , 遊女
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1994 年 7 巻 p. 123-145

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抄録

本研究は近世北海道における経済社会を展望するなかで、女性がその社会に取り込まれていく状況を、遊女と称された女性に焦点をあてて考察することを目的とする。考察の対象とした年代は享保年間から安政年間の終わりまである。この時期に北海道は蝦夷地といわれる辺境から日本先進地域の経済活動の注目を集める土地へと変身する。それは先進地域における産業活動の変動と相関している。近世北海道は漁獲を唯一の生産物とする他地方とは甚だ異なった地域であった。この辺境地が日本先進地域の農業生産制の変動につれて動揺する。蝦夷地物産の流通経路の開発を行なったのは商人団である。その商人団が日本の需要動向をたくみにとらえていた。不足商品は肥料である。関東以北における鰯漁獲量が逓減するなかで鯡がその代替商品となる。北海道には鯡が群来した。関東の干鰯に対抗するために鯡漁に従事する安価な労働力が要求された。その要求に従わざるを得なかったのが生活苦を抱えた出稼人とアイヌである。
近世北海道は人口増加が顕著である。それは鯡漁にむらがった男と女の戯れであった。アイヌ民族を社会化しなかったが、和人男性はこの戯れのなかで私娼を機能的・組織的に管理できる公娼へと組織化していった。

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© 北海道社会学会
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