抄録
本研究では、最初に、博物館資料に関する知識を伝え、生き生きと表現するために記録された先住民の語りを使用して、博物館研究に対する映像人類学の貢献について検討する。個々の博物館資料について、それを製作した先住民コミュニティの見解を誠実に提示することに焦点が置かれる。加えて、多様な利用者グループの期待に応えるため、今日の情報技術を活用しつつ、博物館資料に関する先住民の知識をどうすればもっとも適切に表現できるかについても視点が向けられる。それらのグループには、まずは異文化の全体像を知りたいと望む博物館観覧者や、資料に関するより深い知識を得たいと願う博物館の民族学者、それ以外の研究者が含まれる。しかし、博物館資料を製作した先住民コミュニティが、自らの文化遺産の一部に再びアクセスできるようにするという点を重視すべきである。こうした目的に対しては、慣習的な展示図録(印刷物あるいは多言語対応の電子バージョン)に加え、「mu-north.org」のようなウェブサイトが最適だろう。このウェブサイトでは、博物館資料と関連した包括的な知識が適切に構造化された形式で提示され、たとえ遠隔地でも、多様な利用者グループが容易にアクセスできるのである。