2016 年 85 巻 4 号 p. 380-387
クルメツツジ二重咲き品種の花器形態とその原因遺伝子を分析するため,一重咲きと二重咲き品種を用いて花器の形態とホメオティク MADS 遺伝子を調査した.一重咲きの花器官では各ホールにガク,花弁,雄蕊と雌蕊がそれぞれ形成されているに対し,二重咲きの花ではホール 1 でガクの花弁化が観察された.遺伝子分析では,二重咲き品種‘麒麟’から PISTILLATA(PI)/GLOBOSA(GLO)遺伝子を単離し,一重咲きと二重咲きの花器官を用いて発現解析を行ったところ,RoPI-1 とその mRNA 塩基配列の間には 6 bp の差をもつ RoPI-2 が単離され,二重咲きの RoPI-1 のイントロン 2 には挿入塩基配列が確認された.また一重咲きでは主に花弁と雄蕊で RoPI が発現していたが,二重咲きではすべての花器官で発現していたことから,クルメツツジの二重咲きにおけるガクの花弁化には突然変異した RoPI-1 の発現量増大が関与していると示唆された.