The Horticulture Journal
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原著論文
養液栽培における硝酸カリウム制御によるイチゴ果実に含まれるカリウムの減少
エムディ フアド モンダルエムディ アサジュザマン上野 誠川口 美喜子矢野 彰三伴 琢也田中 秀幸浅尾 俊樹
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2017 年 86 巻 1 号 p. 26-36

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抄録

メロンやイチゴのような高カリウム野菜の摂取は慢性腎臓病患者に対して厳しく制限されている.そこで,イチゴの開花から収穫まで培養液中の硝酸カリウムを制御することにより,低カリウムイチゴの生産を試みた.果実内のカリウム低下は培養液中硝酸カリウム濃度を低下させることにより認められた.イチゴ 4 品種の中で,硝酸カリウムを標準液の 1/16 にした培養液中で育てた‘とよのか’が標準培養液と比べて約 64%まで減少した.果実の酸度やアスコルビン酸濃度は培養液中硝酸カリウムの低下に伴って減少した.イチゴの生育,収量および果実品質を低下させず,低カリウムイチゴを得るために,培養液中の低下した硝酸態窒素は硝酸カルシウムを用いることにより調整した.収量や果実品質低下を伴うことなく,標準液の 1/32 に硝酸カリウムを低下させ,減少した硝酸態窒素を硝酸カルシウムで調整することにより,食品成分表(2011)に示されているイチゴ果実 100 g 生体重当たり 170 mg のカリウム量と比較しておよそ 26%減少(生体重 100 g 当たり 126 mg)が認められた.その減少した果実中カリウム含量は,培養液中の低カリウム化がイチゴのカリウム低吸収を招き,果実へのカリウム転流および蓄積に影響を及ぼした結果を示していた.以上より,培養液中の硝酸カリウムを標準液と比べて 1/32 に低下させると果実のカリウム含量がかなり低下することが考えられた.

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