生育場所の分断化は,生物多様性に村する最も大きな脅威の一つである.残存する植物個体群に与える影響について検証した過去約15年にわたる研究は,分断化が花粉制限による種子生産量の減少をもたらすこと,エッジ効果による環境条件の改変が,新しい個体の加入をはじめとする多くの適応度成分に影響を与えることを示した.また,分断化は遺伝的多様性の減少や,しばしば近親交配を伴う.これらは主に,幼植物の加入や成長を制限すると考えられるが,分断化が個体群の長期的存続に与える影響は,特に世代時間の長い植物で不明瞭である.分断後の小さな個体群が絶滅しやすいことを示す研究結果もあるが,絶滅を導くメカニズムには未だ未解明の部分が多い.さらに,長期的な個体群動態のデータから,絶滅をもたらす複数の要因の相対的重要性や,個体群の存続可能性について検証していく必要がある.