2007 年 12 巻 2 号 p. 156-162
奄美大島では大規模なマングースの駆除事業が展開されているが、その駆除を効果的に実施する上でも、マングースの詳細な生息状況と分布を把握することが不可欠である。今回、トラッキングトンネルを利用したマングースの生息状況の把握を試み、その有効性を検討した。予備実験後に、本種の放逐地点から島を縦断する林道を含む計4つの道路沿いで、夏季と冬季の2回にトラッキングトンネルを累計各556、347基設置した結果、マングースの足跡の採取率は各季16.9%、22.5%であった。特に、放逐地点から奄美中央林道沿いの14km地点までの採取率は41.4%、戸口林道沿いでも34.6%の高い値を示し、徹底的な駆除が行われながらも高密度にマングースが生息していることが確認された。この背景には、捕獲ワナを警戒したトラップ・シャイの個体の存在も考えられる。また、放逐地点から30km以上離れた奄美中央林道沿いや奄美北部でも足跡が得られ、分布の拡大が認められた。加えて、マングース以外のノイヌやノネコの足跡が24ヶ所、ネズミ類などの足跡が300ヶ所で採取され、これらによる在来希少種への影響が懸念された。これまでのマングースの駆除事業では大幅なマングース個体数の減少に成功しているが、一方で少数個体によると思われる分布拡大がみられる。極低密度域などでトラッキングトンネルを活用し、マングースの生息有無が確認できれば、駆除事業がより効率的に展開できるものと期待される。