保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
生息環境モデルによるオオタカの営巣数の広域的予測 : 関東地方とその周辺
尾崎 研一堀江 玲子山浦 悠一遠藤 孝一野中 純中嶋 友彦
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2008 年 13 巻 1 号 p. 37-45

詳細
抄録

オオタカ(Acciviter gentilis)の個体群を保全するためには、その分布と生息数を把握する必要がある。本研究では、オオタカの営巣数を予測する生息環境モデルを作成し、得られたモデルを用いて関東地方とその周辺の10都県における営巣数の分布を予測した。関東地方にある88個のメッシュ(5×5km)の全域でオオタカの営巣場所を探索した結果、182の営巣場所を発見した。生息環境モデルには、これらの各メッシュ内の営巣数を目的変数とし、平坦地面積、市街地面積、森林面積、林縁から200m以内の開放地面積を説明変数とするポアソン回帰を用い、モデルの係数は赤池の情報量基準による複数モデル推測により推定した。作成されたモデルは逸脱度の57%を説明し、データに対して良いあてはまりを示した。モデルによる予測値を静岡県と茨城県全域の繁殖状況調査結果を用いて検証した結果、静岡県の山地に位置する4メッシュを除いた全ての繁殖メッシュで、モデルにより営巣が予測(予測営巣数>0.5)された。以上の結果より、今回のモデルを用いて、関東地方全域の営巣数の分布傾向を予測できると考えられる。作成されたモデルより、関東地方の各メッシュにおける予測営巣数を算出した結果、メッシュあたりの平均営巣数は1.25、全メッシュを合計した予測営巣数は2、909(95%信頼限界:1、699〜5,196)であった。繁殖個体数は個体群保全を行う上で重要な情報であるが、今回の推定値は信頼限界が大きいこと、過大推定かもしれないことを十分に考慮して保全に利用する必要がある。

著者関連情報
© 2008 一般社団法人 日本生態学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top