保全生態学研究
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四国におけるツキノワグマの個体情報の収集 : 体毛をもちいた遺伝学的手法による個体識別(実践報告)
大西 尚樹金澤 文吾長久保 義紀
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ジャーナル オープンアクセス

2008 年 13 巻 1 号 p. 129-135

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抄録

四国のツキノワグマは生息数が数十頭以下と推定され絶滅が危惧されているが、正確な生息状況は不明である。私たちは四国におけるツキノワグマの生息情報を収集するために、ヘアートラップから回収された体毛をもとに個体識別を行った。また、それと並行して電波発信機による行動圏調査のための捕獲を行った。ヘアートラップは2003年5月〜2005年12月にかけて3台設置した。回収された体毛からDNAを抽出し、PCR法をもちいてマイクロサテライトDNA領域10遺伝子座の遺伝子型を決定した。また、アメロゲニン遺伝子領域の遺伝子型より性別を決定した。 2005年7〜9月にラジオテレメトリーによる行動圏調査のために2頭のオスと1頭のメスを捕獲した。ヘアートラップから体毛36サンプルが回収された。そのうちマイクロサテライトDNA領域の遺伝子型が8遺伝子座以上決定されたのは17サンプルであった。これら17サンプルのうち、1サンプルおよび2サンプルが、それぞれ捕獲オス2個体の遺伝子型と一致した。4サンプルは遺伝子型から捕獲されていない1頭のオスと判定された。メスの捕獲個体のものと推定される体毛は確認されなかった。これは捕獲メス個体の行動圏内にヘアートラップが設置されていなかったためと考えられた。ヘアートラップを用いることによって、捕獲することなく生息情報を収集できることが確認された。

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© 2008 一般社団法人 日本生態学会

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