保全生態学研究
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小笠原諸島母島産絶滅危惧種ハザクラキブシの新個体群発見とそれにより明らかになった種特性及び生育環境
安部 哲人星 善男
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2008 年 13 巻 2 号 p. 219-223

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抄録

ハザクラキブシは小笠原諸島母島にのみ分布する固有変種であり、現存個体も1個体のみという絶滅危惧種である。しかし、2007年10月に母島の現存個体とは別の場所で新たに個体群(雌3個体を含む14個体)が発見されたので、既存の個体とあわせて生育状況及び生育環境を報告した。発見された個体群は葉脈数の多さや果実の小ささという形態的特徴からハザクラキブシであると判断された。個体サイズは1〜6m以上で斜面下部では林冠にまで到達する高さの個体もあり、近縁のナガバキブシより大きかった。この個体群の発見は、最近まで現存個体が1個体しか知られていなかったハザクラキブシの分類学的・生態学的特性を検討する上で重要な発見である。自生地はシマホルトノキやオガサワラグワ、ムニンエノキの大木からなる原生林に隣接し、沢沿いの斜面に成立した疎林であった。しかしながら、依然として個体数は15個体と非常に少なく、保全対策が急がれる状況であることには変わりがない。この点でも、新たな個体群の発見は種子からの育苗が可能になったことが保全上大きな意義がある。また、自生地にはアカギが侵入しており、樹冠の被圧により絶滅リスクが高まる可能性があることから、アカギの駆除と合わせた個体群管理の方策を提案した。

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© 2008 一般社団法人 日本生態学会

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