湿地における人為起源の養分の流入は湿地の富栄養化やそれに伴う生物多様性の減少を引き起こす。京都市北区にある深泥池は、多様な生物が生息・生育する池である。池の中央部には浮島がある。この池では、1950〜60年代に松ヶ崎浄水場の配水池から水道水が放水されたり、下水が直接流入したりすることによって富栄養化が進行した。1970年代には水道水の放水がとめられ、下水道の整備が行われたが、その後も配水池から水道水が漏水する問題、降雨時に下水管があふれる問題、交通量の多い道路からの路面水が流入する問題などが残されている。また、二次林が残されている集水域の森林が池に与える影響は解明されていない。そこで、本研究では現在の深泥池の水質分布特性を調べ、池の水質の現状評価を行った。さらに、集水域の影響を明らかにするために、集水域の土壌特性を調べた。集水域土壌中に含まれるNO_3^-層とNH_4^+の濃度は比較的低く、集水域は窒素制限を受けている森林であることが明らかになった。そのため、択抜や有機物除去などによる集水域管理が必要でないことが明らかになった。また、池全体の水質は先行研究同様、池南東部からの水道水の混入と、池北側道路や病院域からの汚水の混入が池の水質に強い負荷を与えていることが明らかになった。特に、2003年1月から池南東部に流入する松ヶ崎浄水場の配水池から漏れる水道水のポンプアップが開始されたが、2003年11月から2007年11月にかけてこの漏水の影響を強くうける南側流路の水質に大きな変化はみられなかった。ただし、このポンプアップは漏水を完全に遮断しておらず、未だに一定量の漏水は流れている。この不完全なポンプアップが続く限りは、これ以上の水質改善は期待できないと考えられた。