保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
河川敷における洪水と草地への火入れがハリエンジュRobinia pseudoacacia L.の種子発芽に及ぼす影響
川西 基博崎尾 均村上 愛果米林 仲
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2010 年 15 巻 2 号 p. 231-240

詳細
抄録

ハリエンジュRobinia pseudoacacia L.の硬実種子は種皮への傷つけや高温刺激によって休眠が解除される。本研究では河川敷におけるハリエンジュの種子による分布拡大に注目し、洪水と河畔草地への火入れによる種子の休眠解除効果を検証した。洪水を想定した土砂との振とう処理と、火入れによる高温処理を行った種子を用いて発芽試験を行った。礫と水を混合し5時間振とうした種子の最終発芽率(80.0±11.2%、平均±標準偏差)は、砂と水を混合した振とう処理(19.2±8.3%)より有意に高く、土砂との振とう時間が長いほど最終発芽率が高かったことから、種子が礫と混合し流下堆積する洪水時では、休眠が解除される可能性が高いと考えられた。草地の火入れ時において、地表下3cmでは温度の変化がほとんどなく、種子の最終発芽率は無処理と差がなかった。地表0cmでは顕著な温度変化が認められ、トダシバ群落では110℃以上、シバ群落では、30〜40℃の最高温度を示した。トダシバ群落では種子の死亡率が著しく高く(84.7±15.4%)、最終発芽率(6.2±9.1%)は低かったことから、本群落への火入れは地表を過度に熱し、地表に存在するハリエンジュ種子の発芽能力を失わせる効果が強いと考えられた。シバ群落への火入れでは、本火入れ実験での全条件中最大の最終発芽率が得られたが、それほど高い値は示さなかった(25.8±20.5%)。草地への火入れは、群落によってハリエンジュ種子の発芽を抑制する効果が期待される場合と促進する危険性がある場合とが考えられた。

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本生態学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top