保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
原著
北海道朱太川水系におけるカワシンジュガイ個体群の現況と局所密度に影響する要因
照井 慧宮崎 佑介松崎 慎一郎鷲谷 いづみ
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2011 年 16 巻 2 号 p. 149-157

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抄録

絶滅危惧種カワシンジュガイMargaritifera laevisの生息にとって良好な環境が現在でも保たれていると考えられる北海道朱太川水系において、27地点(324コドラート:0.5×0.5m)においてカワシンジュガイの局所密度と個体サイズ(殻長)、およびその生息に影響する物理化学的要因について調査した。カワシンジュガイは各コドラートにおいて、0〜75個体/0.25m^2の密度で生息していた。個体サイズのレンジは3.9〜127.1mmと大きく、稚貝の割合が34〜100%と比較的高いことから、現在でも順調に更新が行われていると推測された。一般化線形混合モデルによる解析では、カワシンジュガイの局所密度にはDO・砂の割合・流速が95%信頼区間において0を含まず、正の効果を与えていた。砂の割合・水深については2次項の効果も95%信頼区間において0を含まなかった。局所密度は、DOが9.30〜10.2mg/l、砂の割合が10〜50%、水深が0.2〜0.6m、流速が0.05〜0.30s/mのコドラートで高かった。3つのサイズクラス(<20mm,20〜50mm,>50mm)別に同様の解析を行ったが、生息に影響する要因に顕著な違いは認められなかった。また、生息に好適な環境要因の組み合わせは、河川中心部よりは岸辺近くでみられ、同種の河川横断方向の分布には、それに応じた偏在が認められた。以上の結果から、カワシンジュガイが高い環境要求性をもつことが明らかとなった。河岸改修などによる物理的環境の改変は、個体群の存続に大きな影響を与える可能性がある。

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© 2011 一般社団法人 日本生態学会

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