保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
実践報告
市民による礫質河原に侵入した外来植物対策の評価 : 栃木県鬼怒川における事例
一瀬 克久石井 潤鷲谷 いづみ
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2011 年 16 巻 2 号 p. 221-229

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抄録

栃木県を流れる鬼怒川上中流域の礫質河原では、外来植物シナダレスズメガヤの急速な分布拡大に伴い絶滅危惧植物カワラノギクの個体数が著しく減少した。礫質河原の固有植物保全のために、河原の一部においてカワラノギク保全地が造成され、シナダレスズメガヤを除去するとともに、カワラノギクの種子を導入する事業が実施された。本研究では、保全地造成後毎年実施されている市民によるシナダレスズメガヤの手取りによる選択的除去活動の効果と努力量を評価した。約4年間の市民によるシナダレスズメガヤの選択的除去活動の範囲は約6,800m^2(保全地の約47%)であり、植生調査の結果から、シナダレスズメガヤの平均被度は除去によって約5分の1程度に抑えられていることが示された。河原固有種5種の合計被度とカワラノギクの被度は有意に大きく、いずれも2.4倍になり、カワラノギク保全地におけるシナダレスズメガヤの選択的除去活動は、シナダレスズメガヤの被度を抑えるだけでなく、カワラノギクを含む河原固有種の再生に有効であることが示唆された。除去活動は4年間で9回実施され、1回あたりの平均作業時間は1.4時間で、合計12.5時間であった。1回あたりの参加人数は35人で、のべ319人の参加者と推定された。この値に基づくと、1人・1時間あたりの除去面積は16.1m^2となった。

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© 2011 一般社団法人 日本生態学会

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