2011 年 16 巻 2 号 p. 231-241
昆虫をはじめとする生物の標本データは、過去の生物情報として非常に高い価値を持つが、それらを保全生態学等の研究に利用するためには、由来の異なるデータを集約し、汎用性の高い形式に整備する必要がある。しかし、こういったデータの整備および公開方法について、未だ技法や体系が十分に確立していない。本稿において筆者らは、標本データを様々な研究で利用できる生物多様性情報として再整備する方法、ならびに整備したデータをWeb技術によって広く発信する方法を提案する。具体例として、分類学的に整理されたオサムシ科標本コレクションを国際機関であるGBIF(Global Biodiversity Information Faculty)の標準規格であるDarwin Core互換のフォーマットで整理しなおし、WebマッシュアップというWeb技術を活用することによって、データを様々な形式で閲覧・取得できるシステムを開発した。本稿は、そのシステムの仕様に関する解説を通して、生物多様性情報の整備と活用の実現方法について概説する。そして、これらWeb技術を利用した生物多様性情報の発信についての将来的な可能性を議論する。