保全生態学研究
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調査報告
瀬戸内海沿岸域における外来植物ランタナ(シチヘンゲ)の野生化
山本 和司佐々木 晶子中坪 孝之
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2012 年 17 巻 2 号 p. 257-262

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抄録

ランタナ(シチヘンゲ)Lantana camara L.は南アメリカ原産のクマツヅラ科の低木で、観賞用に栽培されているが、逸出・野生化した個体による悪影響が世界各地で顕在化しており、IUCN(国際自然保護連合)の「世界の侵略的外来種ワースト100」に選定されている。日本では、要注意外来生物に選定され、沖縄や小笠原をはじめとする島嶼部、本州の一部地域での野生化が報告されているが、地域レベルでの分布の広がりに関する詳細な報告はない。本研究では、瀬戸内海沿岸域におけるランタナの野生化の実態を明らかにするとともに、分布の制限要因の一つと考えられる冬期の気温との関係を検討した。広島県の沿岸域と島嶼部を調査地域とし、GISで1km四方ごとに4000のメッシュに区切った。このうち、森林などランタナが植栽されていないと考えられるメッシュを除外して、約500のメッシュを抽出した。これらのメッシュごとに2010年5月から同年12月にかけて目視による調査を行った結果、100メッシュ、186ヶ所でランタナの生育を確認できた。このうちの47ヶ所は周囲の状況から逸出・野生化したものと判断された。従来の研究では、気温が頻繁に5℃を下回るところではランタナの生育は困難であるとされていたが、2011年1月は調査地域が大寒波に襲われ、ランタナが生育していたすべての地点で平均気温が5℃を大きく下回まわった。しかし、同年の7月から11月にかけて再調査したところ、ほとんどの個体の生存が確認され、ランタナの潜在的な生育可能温度域が従来の報告より広いことが示唆された。

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© 2012 一般社団法人 日本生態学会

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