土地利用の変化は、生物多様性の減少を引き起こす主要な駆動要因の一つである。したがって、広域スケールで生物多様性の現状を評価し将来の変化を予測するためには、生物多様性への影響という観点から適切な区分および解像度をもった土地利用情報の整備が欠かせない。しかし、国内に存在する土地利用図は、土地利用区分の偏りや区分の不足などから単独で生物多様性への影響評価に用いるには限界がある。そこで、本研究では、植生図において用いられている群落区分を、生物の分布推定モデルに用いることを念頭に、集約および全国スケールで標準化するための方法を検討することを目的とした。具体的には、多数ある植生群落を、植生自然度として記録された情報を加味した上で、分布推定に利用しやすいよう50の細分類区分に集約した。また、土地利用分類を階層的に集約することで(中分類17、大分類9)、利用者が目的に応じて適切な分類階層を選べるよう配慮した。さらに、二次林や二次草原など、人間活動との関わりで維持されてきた生態系を土地利用区分の中に組み込んだ。植生図にもとづいた本土地利用図から算出した全国の農地面積や森林面積は、水田を過大評価したものの既存の土地利用情報と概ね一致しておりその妥当性があると考えられた。本研究で検討された方法で作成された土地利用図は全国スケールで利用可能な地図情報として公開予定である。今後、本土地利用図は広域的な生物多様性の評価や予測に広く活用されることが期待される。