保全生態学研究
Online ISSN : 2424-1431
Print ISSN : 1342-4327
調査報告
北海道サロベツ湿原泥炭採掘跡地における外来植物の侵入
江川 知花 西村 愛子小山 明日香露崎 史朗
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2017 年 22 巻 1 号 p. 187-197

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抄録

北海道サロベツ湿原において、ミズゴケ泥炭採掘後の外来植物の侵入状況を明らかにするため、採掘工場跡地駐車場、採掘用作業道および採掘区域21箇所でフロラ調査を行った。得られた結果を採掘以前および未採掘の高層湿原におけるフロラ調査結果と比較し、採掘によって外来植物の侵入が促進された可能性について考察した。調査区域全体で、外来種22種、環境省および北海道レッドリスト掲載種5種を含む計123種の生育が確認された。確認された外来種のうち9種は採掘以前には定着記録がなく、未採掘湿原においても確認されていない種であり、泥炭採掘を契機に新たに侵入したと考えられた。外来種の多くは駐車場や作業道に分布していたが、採掘区域内でも、作業道に隣接し、比較的地下水位の低い2箇所にヒメスイバ、エゾノギシギシ、ブタナの3種が侵入していた。ヒメスイバとエゾノギシギシは、平成27年3月に環境省より公表された「わが国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」において「総合対策外来種」に指定されている強害草であり、繁茂すれば希少種の生育や採掘後の湿原植生の回復に悪影響を与えることが危惧される。本調査において確認された外来種が今後侵入域を拡大し、湿原景観や生態系へ影響を及ぼすことのないよう、継続的なモニタリングが必要である。

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© 2016 一般社団法人 日本生態学会

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