2017 年 22 巻 1 号 p. 213-217
シカの個体数増加による、湿原の植生攪乱が問題となっており、深泥池(京都市北区)においてもシカが侵入して湿原の植物を採食している。空中写真の判読によりシカの生息痕となる獣道(シカ道)を抽出することで湿原植生への影響を評価できることがわかっており、安価に高解像度の空中写真を繰り返し撮影できるUAVを応用できれば、踏査困難な場所が多い湿原植生へのシカの影響を明らかにする新しい手法として利用できる。深泥池においてUAVで撮影した2時期の空中写真の比較から、シカ道の時空間変化を明らかにすることを目的とし、2015年3月6日と約1年後の2016年2月26日にUAVで空撮した画像を分析した。オブジェクトベース画像解析を用い、オルソ画像のRGB値とSfMで得られるDSMを用いてオブジェクトを作成し、次に、教師付分類でシカ道、その他に区分した。カーネル密度推定によりシカ道の密度を算出し、2016年のシカ道の密度と2015年のシカ道の密度の差を算出した。シカ道の合計面積はほとんど変化が見られなかった。シカ道の密度が変化し、特に西部と中央部の浮島で増加していることがわかった。本研究の簡便な手法は、踏査困難な場所が多い湿原植生へのシカの影響を早期に検知するために有効な手法だといえる。また、UAVにより生態系の空撮を行いライブラリとして保管しておくことは、生態系マネジメントにおいて有用であることが示された。