近年、全国各地の湖沼において浮葉植物であるヒシ属植物の群落面積が増加し、その対策が課題となっている。対策の計画立案や効果検証のために、ヒシ属植物の分布変化や季節的変動のモニタリングが必要となる。本研究では、福井県の三方湖に生育するヒシTrapa japonicaを対象として、無人飛行機(UAV: Unmanned Aerial Vehicle、通称ドローン)による分布推定手法を開発した。撮影高度を決定するため、1辺1 cmおよび 2 cm、4 cmの各格子を組み合わせたイラストを対地高度20-50 mで撮影し目視判読した結果、対地高度20 mの時、1 cm格子(ヒシの個葉を模したもの)を組み合わせた6cmの方形領域(ロゼットを模したもの)を正確に判別できた。2016年9月11日に研究対象地を高度20 mから撮影し、オルソモザイク画像(ピクセルサイズ:0.9 cm)を作成した。この画像をもとに、400地点(学習データ200地点、検証データ200地点)のヒシの在・不在(目視判読に基づく)およびRGB値のデータセットを作成した。一般化線形モデルによる解析の結果、G値(緑色の輝度)を説明変数としたとき、検証データにおいて一致率91.5%およびAUC値0.97ともっとも高い推定精度を示した。以上の結果から、湖面のヒシの分布推定のためにUAVを用いた本手法の有効性が示された。