流域・沿岸域においては、土砂や水質といった物理環境要因、人の立入りによる攪乱等、様々な要因が複雑に関連し合いながら生息地が形成されている。そのため、生態系保全を目的とし、流域・沿岸域の一体的な管理を行う際には、これらの要因の相互関係や、最終的に対象種に影響を与えるまでのプロセスを、全体像として把握する必要がある。いくつかの地域では、要因の関連性をインパクト・レスポンスフローとして示す研究が行われてきているが、全国規模で行われている環境省のモニタリング調査においては、このような構造図が作成されておらず、個体数変動と関連する環境指標も整備されてこなかった。そこで本研究では、全国の沿岸域で長年モニタリング調査が行われてきた鳥類のシギ・チドリ類を対象とし、生息地に影響を与えると考えられる要因の抽出とその構造化を行った。まず、報告書に記載された影響要因を元に調査員を対象としたアンケート調査を行い、影響要因の抽出を行った。さらに、研究者を対象としたアンケート調査を行い、抽出した影響要因・広域スケールの要因・シギ・チドリ類への影響の3者の関連性を結合しながら、要因の構造化を行った。文献調査により、本研究で作成した構造図の妥当性を示す研究が海外では数多く行われているものの、国内では既往研究が非常に少ないことが明らかとなった。今後は本研究の構造図を元に、国内においても個々の影響要因に着目した研究や、モニタリング指標の整備を行っていくことが求められる。