保全生態学研究
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Print ISSN : 1342-4327
調査報告
筑波大学八ヶ岳演習林におけるサクラソウの 28年間にわたる個体群動態
北本 尚子本城 正憲津村 義彦大澤 良
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2021 年 26 巻 1 号 論文ID: 1932

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抄録

サクラソウ Primula sieboldii E. Morrenは、落葉樹林の林床や草原に生育する多年生の準絶滅危惧種である。地下芽によるクローン成長と種子繁殖を行う。地下芽により増えた株をラメット、同一の遺伝子型を持つラメットの集まりをジェネットと呼ぶ。異型花柱性の他殖性であり、柱頭が葯よりも高い位置にある長花柱花ジェネットと、低い位置にある短花柱花ジェネット間で受粉しないと種子が生産されない。長野県にある筑波大学山岳科学センター八ヶ岳演習林には、サクラソウの自生地が存在する。保全と研究を目的として、 1990年から一部の局所個体群について、断続的に個体数や花型が調査されているが、全域での調査は行われていないため、保全上重要となる個体群動態に関するデータが不足している。そこで、演習林全域におけるサクラソウの個体数を 2006年と 2018年に調査し、 1990年の調査記録と比較した。その結果、ラメット総数は 28年間で大きく変わらなかったものの、開花ラメット数は 2006年の 2833に対し、 2018年は 1518と有意に減少していた。この傾向は、開花ジェネット数においてさらに顕著であり、 2006年は 939ジェネットが開花したのに対し、 2018年は半分以下の 434ジェネットでしか開花が観察されなかった。開花ジェネット数の減少により、花型比の偏りが顕著となり、どちらかの花型が 1ジェネット以下となっている局所個体群が全体の 4割にあたる 12群で観察された。このような局所個体群では、種子繁殖の失敗や次世代の遺伝的多様性の減少が生じている可能性がある。

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