2021 年 26 巻 2 号 論文ID: 2027
わが国は戦後の拡大造林政策による上流集水域の森林化およびダム建設・河川改修による流況の平滑化が進行している。このようにわが国の戦後の拡大造林政策および治水・利水政策の弊害を検証するためには、上述の期間中の直近 30年程度の中期的な期間のモニタリングが重要になる。本報では、中期的な期間の魚類の個体数変動から河川環境の変化を推定し、望ましい河川整備のあり方を提案することを目的とする。福井県南川に注目し、 2000年から現在に至る河川水辺の国勢調査の結果を解析することによって、魚類相および個体数が豊かな河川における魚類群集の経年変化を統計解析した。南川において、過去約 20年間の魚類調査の結果、カワヨシノボリが増加し、ウグイおよびアカザが減少している可能性が示唆された。カワヨシノボリが増加した原因として平瀬が増加し、ウグイおよびアカザが減少した原因として早瀬や淵が減少した可能性が考えられる。今後は、南川において早瀬や淵を造成する河川整備を提案する。