保全生態学研究
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小笠原諸島の乾性低木林構成種にみられる多様な水分生理的特性(<特集>亜熱帯域島嶼の生態系管理(I):未来環境創造型基礎研究プロジェクトから)
見塩 昌子
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1999 年 4 巻 2 号 p. 167-173

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抄録

(1)1989年8月に,小笠原諸島父島の尾根上において,乾性低木林を構成する5樹種について,生育地点の水分条件および葉からの蒸散による水分消費量を比較した.水分条件としては,5種の根が分布する地点の土壌の厚さを推定し,同時に,5種について夜明け直前の葉の水ポテンシャルを測定した.また,水分消費量の比較のために,5種の葉について,日中の気孔コンダクタンスを測定した.(2)調査地の土壌の厚さは,場所ごとに非常に不均一で,調査対象とした種の中には,比較的土壌の薄い地点にのみ生育する種と,逆に土壌の厚い地点にのみ生育する種が認められた.前者は後者に比べて,夜明け直前の葉の水ポテンシャルが低い傾向にあった.(3)日中の気孔コンダクタンスの値からは,土壌の薄い地点に生育する種は,厚い地点の種に比べて水分消費量が低い傾向にあることが推測された.(4)調査対象とした5種は,それぞれ同じような生育場所の中でも土壌水分条件の異なる地点に生育しており,その水分条件や葉の乾燥耐性に見合った水分消費を行っていることが示唆された.

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© 1999 一般社団法人 日本生態学会

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