2002 年 6 巻 2 号 p. 143-154
ヒゴタイは,九州,東海,中国地方に分布するが,全国的に減少が著しく絶滅危惧種に選定されている.しかし,本種に着目した植生学的な研究や保全に関する研究は少なく,保全対策の方向性について具体的な提示はなされていない.日本国内における分布の中心地である阿蘇地方では,自生個体群の保全が十分になされる前にヒゴタイの大規模な植栽が進められている.本稿では,阿蘇地方とその周辺地域におけるヒゴタイの自生地と植栽地の実態と種組成の特徴を明らかにするために,現地調査と既往調査における植生調査の結果を整理した.それに基づき保全の検討を行った.自生地は,絶滅危惧種,満鮮要素の種,草原性の種が多く出現した.一方,植栽地ではヒゴタイのみに重点がおかれた管理がされており,草原性の種は少なく路傍雑草が多く生育していた.現在,阿蘇地方では自生個体群が激減していることを考慮して,積極的に既存の植栽地をヒゴタイの保全に有効利用する必要性があることを指摘した.