保全生態学研究
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ヒヌマイトトンボ保全のために創出したヨシ群落1年目の動態と侵入した蜻蛉目昆虫
松浦 聡子渡辺 守
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2004 年 9 巻 2 号 p. 165-172

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抄録

ヒヌマイトトンボの保全を目的として,生息地に隣接する休耕田に人為的にヨシ群落を創出した.4月から11月にかけて,群落内に設置した方形区でヨシの生長を測定すると共に,ヒヌマイトトンボの生息空間であるヨシ群落下部における相対照度や水温などの変化を既存の生息地と比較した.創出地で芽生えたヨシの稈の数は既存の生息地とほぼ同様であったが,細く低かったため,群落下部の照度は高くなっていた.創出地には多種の蜻蛉目成虫が飛来していたが,秋にはごく少数のヒヌマイトトンボと多数のアオモンイトトンボの幼虫しか採集されなかった.後者はヒヌマイトトンボの捕食者であり,この種を創出地から排除するためには,群落の水質を汽水に保つばかりでなく,枯死した稈を残してヨシ群落を密生させる必要があると考えられた.

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© 2004 一般社団法人 日本生態学会

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